キャッシュレスにしたはずなのに、お金の管理がもっと面倒になった理由

現金を持ち歩かなくなって久しい。

財布は薄くなり、レジでの支払いは数秒で終わる、生活の「表面」は、たしかに軽くなった。

でも、頭の中はどうだろう。

メインバンク、サブバンク、証券口座、PayPay、楽天Pay、d払い、ポイントカードと連携したクレジットなど、気づけば、「お金に関係するアカウント」を10も20も抱えている。

それぞれに異なるIDとパスワード、認証アプリ、秘密の質問。

いつの間にか、財布の中身ではなく、頭の中がパンパンに。

「持っている便利さ」の賞味期限

口座やアプリを増やすのは正しい選択であり、ポイントが貯まる、手数料が安い、キャンペーンがあるなど、それぞれに理由があって、そのたびに「お得」を手に入れた気がしていた。

でも、あるとき気づく。

そのお得を管理するためのコストを、誰も計算していなかったことに。

ログインに費やす時間。

「どのアプリにいくら残っているか」を把握しようとするときの疲弊感。

アプリのアップデートのたびに迫ってくる二段階認証の壁。

これらは金銭的なコストではないから、家計簿には現れないが結構消耗させられている。

最近、使っていない口座に手数料がかかるようになったというニュースを見た。

もちろん銀行側の事情はあるにせよ、あれは遠回しにこう言っていたのかもしれない「あなたが忘れている口座が、ここにありますよ」と。

存在を忘れていた口座。

数年に一度しかログインしない証券アカウント。

「解約しようと思っていた」まま時間だけが過ぎたサービス。

これらは、財布に入れたまま一度も使っていないポイントカードと、本質的には同じものだ。ただ見えないぶん、より根深い。

「減らす技術」という、新しいリテラシー

断捨離という言葉が流行ったとき、いろいろな物理的なものを手放した。

クローゼットを開けて、服を床に並べて2〜3年使っていないものを手放した。

いつの間にか、同じことがデジタルの世界でも起き始めている。

ただこちらは、床に並べることができず、アイコンをタップするまで、そのアカウントが「今の自分に必要かどうか」すら、わからない。

だから余計に後回しになる。持っていても邪魔にはならないし・・・。

そして余計に、頭の片隅に「整理しなきゃ」という小さな負荷が居座り続ける。

認知資源、という言葉があって、これは人が一日に使える判断力や集中力には限りがあるという考え方だ。

口座の整理は、節約の話ではないのかもしれないが「手数料がもったいないから」ではなく、「もう、覚えていたくないから」そういう動機で動く人が増えている気がする。

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